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コロナが変える世界 人口減少の時代 世界は江戸の世を目指す

コロナが変える世界 人口減少の時代 世界は江戸の世を目指す

 

1.米国の国勢調査と中国の国勢調査

人口減少の時代を象徴するような米国の国勢調査が4月26日に発表されました。それによると、米国の人口は3億3144万9281人となり、10年前の前回調査と比べて7.4%の増加にとどまりました。世界大恐慌を含む1940年の調査(10年前比で7.3%増)に次いで史上2番目に低い伸び率となりました。

米国勢調査は10年に1度の実施で、4月1日時点の人口を調べます。伸び率が前回調査(10年前比で9.7%増)からさらに縮小して低水準にとどまったのは、白人層の高齢化と出生率の低下、移民流入の鈍化が主因とみられています。

中国でも10年に一度の国勢調査が発表されました。こちらは公表が曖昧で、わずかに増加していると中国国家当局が4月末に発表しましたが、正式な発表は行われていません。

これは、実際には人口が減少したから発表できないでいるという見方があります。

英・フィナンシャルタイムズ紙は「1950年代末の毛沢東の大躍進政策の失敗が招いた大飢饉の時代以来の人口減少」を発表すると報道していました。実際には公式には発表されていませんが、中国の人口は減少しているとみられます。中国の人口が減少すれば、現時点で推計13億8,000万人のインドが早々に人口世界一となる可能性があるとアナリストらは見ています。

日本は21年初めに外国人を合わせた日本の総人口は概算で1億2557万人と総務省は発表しました。1年間で42万人の減少です。

2.米国、中国、日本、インドの人口と経済の比較

人口の増加は経済と密接な関係があります。そこで、米国、中国、日本、インドの人口と経済の関係を見てみました。

1980年を100として、人口、名目GDPがどのように変化しているかを調べました。

1980年を100とした米国のGDPと人口の変化

米国は1980年の人口を100とした場合、145.84と1.46倍となり、名目GDPは7.94倍となっています。

1980年を100とした日本のGDPと人口の変化

日本は1980年の人口を100とした場合、107.29と1.07倍となり、名目GDPは4.77倍となっています。米国と名目GDPを比較した場合、米国の方が伸び率が高く、日米の差は1980年に比べて開いているということです。バブル崩壊後の日本経済の弱体化もありますが、人口がほとんど伸びていないことも起因しているでしょう。

1980年を100とした場合の中国の人口とGDPの変化

中国は1980年の人口を100とした場合、145.84と1.46倍となり、名目GDPは54.92倍となっています。意外なことに、人口の増加率はわずかに米国の方が上回っています。移民の多い米国は人口増加を続けてきたのです。逆に中国は世界一の人口を背景に消費が伸び、それに伴い経済が54.92倍にも成長したのです。

1980年を100とした場合のインドの人口とGDPの変化

インドは1980年の人口を100とした場合、199.15と1.99倍となり、名目GDPは16.10倍となっています。インドは米国や中国と比較しても人口の増加が著しいのが分かります。約2倍になっています。それに対して、名目GDPの成長は中国と比較すると、まだまだ小さいのが分かります。そして、人口はまもなく、中国を抜くことは確実ですから、今後のインド経済の成長性は高いであろうことが予測できます。

こうして比較してみると、日本のみが名目GDPが伸びていないことが分かります。やはり、人口が伸びていない日本は力強い経済成長は望みにくいのではないかと思われます。

 

3.世界人口のピークと経済

米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(Institute of Health Metrics and Evalution:IHME)は2020年7月14日に世界の人口は2064年に97.3億人でピークを迎え、その後減少に転じて、2100年には87億人になるとの予測を英医学誌のランセットに発表しました。(https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S0140-6736%2820%2930677-2

2019年7月には国連経済社会局人口部も「世界人口推計2019年版」を発表しています。(プレスリリース:https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/)では世界人口は2100年頃に110億人でほぼピークに達する可能性があると結論づけています。

二つの研究には差がありますが、米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所の研究では国連や他機関の研究とどのように分析手法が異なるのかを説明しながら、それらと参考指標を同じにした場合、2100年の人口差は大きくは出生率の差異によるものだとしています。

逆に共通しているのは、世界全体で人口の高齢化が進んでいること、2100年を前に人口が減少に転じている国が多いことです。

つまり、遅くとも今世紀末には世界の人口はピークを打ち、減少に転じるであろうこと、また2100年を前に人口が減少に転じている国が多々あるであろうことは間違いなさそうです。

米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所の研究によれば、2017年~2100年の間に、日本、タイ、ウクライナ、スペインを含む23カ国で50%にのぼる人口減少、その他34カ国でも25~50%の減少が予測されています。

経済と人口に相関関係があるとすると、世界の経済成長は今世紀が最後であると考えられるのかもしれません。

 

4.人口減少の時代と経済

人類の歴史300万年のうち、ほとんどは人口は安定していたと考えられます。ところが、約1万年前に農耕を覚えてから、徐々に人口が増え、産業革命以降さらに加速しました。

西暦元年には1億人だった人口は1000年には2億人、1500年には5億人、1900年には15億人、そして現在78億人となっています。長い歴史から見ると、わずかな期間に急激に増えたとも言えるわけです。

なぜ、人口は増えるのか?実は自給自足をしている社会では人口は安定しています。食料の生産・供給量以上に人口が増えることはないからです。

現在、人口が増加している国々は先進国の植民地だったか、現在先進国に「資源」や「換金作物」を輸出している国です。貨幣経済が入ってきて、食料の供給が増え、人口も増えていくのです。

換金作物の一例をあげると、コーヒー、紅茶、バナナ、ナタデココ、ゴム、小麦、綿、木材、石油、鉄、ダイヤモンド等です。これらの換金作物は輸出品ですので、自分たちの食糧は輸入品に依存しなければならなくなり、自給自足社会は終焉します。

自給自足で安定していた人口は、換金作物を輸出することにより豊かさを手にし、貨幣経済に組み込まれます。そして、貨幣経済によって豊かさを手にできることで、人口が増え始めます。増えた人口を養うために、生産が拡大され、経済が発展します。経済が発展すれば人口が増え、人口が増えるから経済が発展するというサイクルがはじまっていくのです。

しかし、自国の内需だけでは経済成長を続けることは難しくなり、貿易が拡大し、グローバル社会の一員となっていくわけです。

このサイクルは永遠なのでしょうか。資本主義は常にフロンティアを求めて発展してきました。つまり、新たな市場を作り続けてきたのです。

しかし、そのフロンティアはアフリカを最後に、この地球上にはなくなります。そして地球の人口はピークを打ちます。もう、どこにもフロンティアはこの地球上にはないというということです。

日本だけではなく、世界全体で、地球全体で人口のピーク=経済のピークがやってくると考えた方が良いのかもしれません。

人類は今世紀を最後に地球上での人口増加、経済成長の限界を迎え、人口減少、経済縮小を経験し始めるのではないでしょうか。しかし、人口減少、経済縮小が豊かさの減少ではないと思うのです。

日本人になじみのある人物で表現するとすると、豊臣秀吉から徳川家康へということでしょうか。

拡大の一途をたどった豊臣秀吉は、日本国内の領土を報奨とした手法を止めることができず、朝鮮出兵で更なる拡大を目指しました。一方で、徳川家康は日本国内を統一しましたが、拡大による手法は取りませんでした。日本の領土を天からの預かりものとする発想で、維持・管理し続けました。人口は3000万人前後で安定しており、江戸時代は文化が発達し、平和な300年でした。

世界は江戸の世を目指す。これは一つの答えなのではないでしょうか。

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