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ニュースまとめ「日銀・地銀再編へ資金支援当座預金にプラス金利」

日銀・地銀再編へ資金支援当座預金にプラス金利

 

 

中小企業の経営者の方々の経営のヒントに!「日経新聞」から時代の流れを読み未来構築のヒントを提供します。日経新聞から学ぶ 中小企業の「ミライ」皆さん、こんにちは。中小企業の未来創造パートナーの宮野です。本日の日経新聞朝刊から取り上げる記事は【日銀、地銀再編へ資金支援 当座預金にプラス金利】です。

1.地域金融機関強化のための特別当座預金制度とは

2.この制度の狙いを考えてみる

3.日銀の方向性から見る今後

1.地域金融機関強化のための特別当座預金制度とは

  • 11月10日に開かれた日本銀行の政策委員会・通常会合で、日本銀行は「地域金融強化のための特別当座預金制度」を、3年間の時限措置として導入する方針を決定しました。(「地域金融機関強化のための特別当座預金制度」の導入について:https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel201110a.pdf(「地域金融強化のための特別当座預金制度」の骨子に関する補足説明:https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel201110b.pdf
  • この新制度は経営統合を条件の一つにする非常に踏み込んだ内容になっています。日銀が年0.1%の金利を上乗せする条件として、経営基盤の強化に向けた(1)収益力の向上や経費削減、(2)経営統合の二つをあげています。
  • 収益の向上などの指標とするのは、本業の粗利益に対する経費の割合です。これをOHR(Over Head Ratio/オーバーヘッドレシオ)といいます。このOHRが以下のように改善されることが条件となります。

((「地域金融強化のための特別当座預金制度」の骨子に関する補足説明:https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel201110b.pdf)より引用)
  • 2019年度と比較して、最終の2022年度には改善率が4%以上になることをメドとしています。経営統合は23年3月末までに機関決定し、日銀が経営基盤の強化につながる計画だと確認することが条件となります。
  • この制度の対象先は、まだすべて決定していません。現在までの発表では、日本銀行の取引先である地域銀行、信用金庫とされていますが、「その他の地域金融機関(信用組合、労働金庫、農・漁協等)を対象先とするかは、関係先との協議も踏まえて決定する」とされています。もし、全ての地銀と信用金庫の当座預金に年0.1%の金利を上乗せした場合、年400億~500億円を金融機関側が得るといいます。この規模となると、2019年の地銀と信金の純利益は合計約9千億円となり、支援は5%相当となる大きさです。
  • この制度の発表を受けて、早速反響が起きています。横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つ「コアコンコルディア・フィナンシャルグル―プ」が11日の中間決算発表の記者会見で「制度の経済的なメリットは大きく、チャレンジしたいと思っている」と述べ、導入されれば申請したいという考えを示しています。

2.この制度の狙いを考えてみる

①金融機関への補助金として

  • 地域経済の発展に貢献すること、経費率の低下などで測った経営基盤の強化、あるいは経営統合が条件ではありますが、実際には、比較的緩い条件で地域金融機関の利用が認められそうです。そう考えると、実質的には低金利で苦しむ地域金融機関への補助金という性格があるのは間違いないでしょう。
  • では、なぜ、このような補助金的な要素のある政策を打ち出すのか?です。この回答は黒田日銀総裁が10月4日に行った講演の発言が参考になります。
  • 「経済が想定以上に悪化すれば、金融システムに影響する可能性があることにも留意が必要だ」
  • つまり、現状の地域金融機関は想像以上に悪いのだと思われます。そして、もしも、深刻な経営危機が報じられることがあったとすると、金融システムの安定が危機的な状況になってしまいます。だから、今、地域金融機関を救済しておかなければならないということでしょう。
  • 日本銀行には二つの使命があります。一つは物価の安定、そしてもう一つは金融・決済システムの安定です。今回の制度は日銀が信用秩序の安定を重要視することとなったということです。今後の日銀の方向性を理解する上で、非常に大きな制度だと考えられます。

②菅政権が推進する地域金融機関統合の後押し

  • 菅首相は自民党総裁選への出馬を表明した際の記者会見で、地方金融機関の競争力強化に向けた再編に言及しています。「自ら経営改革を進めて経営基盤を強化し、地域に貢献していく必要がある」と指摘し、「個々の銀行の経営判断の話になるが、再編も一つの選択肢になる」と語っています。
  • 加藤勝信官房長官は11日午前の記者会見で、地域銀行に「自らの経営改革を進め、経営基盤を強化して、地域に貢献していただくことを期待している」とした上で、日銀の制度を「地方銀行の経営基盤強化を促すものと評価している」と述べています。
  • さらに、麻生太郎財務相兼金融担当に、地銀の経営基盤強化のため、再編促進を含めた環境整備を進めるよう指示しています。
  • そして、政府はすでに地銀統合へと舵を切った法律を制定しています。2020年5月20日に「地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法」が成立しており、11月27日に施行されます。
  • つまり、今回の制度は日銀が政府に歩調を合わせ、地域金融機関の統合を後押しする形となっているわけです。現在は、各地域金融機関は「制度ありきで再編はしない」ということですが、今後は再編機運は高まってくることは間違いないと思います。

③金融政策の正常化への布石

  • 今回の制度は、一定の要件を満たす地域金融機関を対象に、当座預金残高に対して年0.1%の上乗せ金利を付ける措置です。これは実質的にはマイナス金政策の修正となります。制度を利用することになった場合、一部の銀行対して、当座預金残高に年0.1%の金利を上乗せすることは、政策金利の-0.1%を事実上引き上げることになります。金融機関同士の短期資金を貸し借りする市場である「コール市場」で金利に上昇圧力がかかるでしょう。長期金利も上昇圧力がかかることになります。
  • これは、これまでの日銀の政策に矛盾することになります。マイナス金利政策を敷いてでも、資金を市場に供給し、物価上昇を目指すのが日銀の政策でした。しかし、実質的に金利に上昇圧力がかかる政策となると、これは金融引き締めとなるわけです。
  • 今回の制度が日銀がこれまで行ってきた金融緩和政策の副作用緩和を狙っているともとれます。金融緩和が物価の上昇が目的だったとすると、今回の制度は金融・決済システムの安定を目指した制度といえます。
  • つまり、日銀は物価の安定(2%の緩やかな上昇)から、金融・決済システムの安定重視に舵を切ったということです。この制度はマイナス金利政策の修正であり、金融正常化へ向けた一歩なのかもしれません。だからこそ、重要な制度であり、一つの転換点といえるかもしれません。

3.日銀の方向性から見る今後

  • 1.2で見たように、日銀の方向性が変わってきたと見えます。この先にあるのは、地域金融機関の再編やマイナス金利の解除です。そして、私たちの経済活動からすると、「金利上昇」の可能性が重要です。
  • 現在のコロナ禍では、すぐに金利の大幅な上昇はないとは思います。しかし、コロナが落ち着き、日本経済が回復に踏み出した時、金利は上昇圧力がかかります。その際に、実質的にマイナス金利を解除し、金融正常化へ日銀が向かっていたとしたら、金利は上昇し始めるでしょう。
  • 金利が上昇し始めたとき、今の現役世代のほとんどは、誰も経験したことのない経済状況で生きることになります。つまり、現在の経済活動の中心にいる人々は誰も金利が上昇することを経験したことがないのです。
  • これは、日本のビジネスマンの弱点だと私は思っています。だからこそ、「金利から目を離すな」といつもお伝えしています。金利に敏感になっておかないと、実際に金利が上昇したときに、自分の仕事や生活で、予想外のことが起こる可能性があります。
  • 日銀が異次元緩和の副作用の修正に入ったとすると、コロナが落ち着いたころ、金利は上昇し始めるでしょう。その時、予測していた企業と、まったく予測していなかった企業では大きな差が出始めるはずです。

今後、金利と金利に関わる政策には大いに注目しておいてください。本日はここまで。ありがとうございました。中小企業の未来創造パートナー宮野宏樹

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