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ニュースまとめ「地銀再編が始まった」

地銀再編が始まった じもとHDとがSBIと提携

  1. じもとHDがSBIと提携 日銀の新制度活用
  2. 公的資金注入行の行方
  3. 再編の時間軸

1.じもとHDがSBIと提携 日銀の新制度活用

宮城県の仙台銀行と山形県のきらやか銀行を傘下に持つ「じもとホールディングス」は、ネット金融大手のSBIホールディングスから出資を受けて、資本業務提携を結ぶことを、20日、正式に発表。

20日付の有価証券届出書で、SBI地銀ホールディングスを割当先とする増資を通じ、約34億3000万円を調達すると開示しました。

この資本提携に伴って、傘下のきらやか銀行が保有し、含み損が出ている有価証券を売却する方針で、じもとホールディングスは今年度の最終損益が、これまでの予想の17億円の黒字から一転して、30億円の赤字になる見通しだとしています。

今回の提携で、じもとホールディングスは財務基盤を強化するとともに、資産の運用をSBIに委託して収益力を高めるねらいがあります。

一方のSBIは各地の地方銀行と提携を進める「地銀連合構想」を掲げていて、東北地方ではこれまでに福島銀行と資本業務提携を行っています。

仙台銀行ときらやか銀行が新たに加わることで、資本提携する銀行は7行に増え、地方銀行を足がかりに自社の金融サービスを広げたい考えです。

地銀連合構想を掲げるSBIは島根銀行、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行、東和銀行の5行と資本提携を結んでいます。最終的に10行程度に増やす方針を掲げており、今後も地銀との資本提携が進む見通しです。

じもとホールディングスとSBIホールディングスは20日、仙台市で記者会見を開きました。

この中で、じもとホールディングスの鈴木隆会長は「地元企業への本業支援を強化するために、SBIは連携相手としてベストパートナーだ」と述べています。

じもとホールディングスは今年度の最終損益が30億円の赤字になる見通しで、これについて鈴木会長は「SBIとの提携を通じた有価証券の運用やコストの削減などにより、次の年度は必ず黒字化させる」と述べました。

また、日銀がコスト削減や経営統合などを進める地方銀行に対し、当座預金の金利を年0.1%上乗せする新たな制度の活用を申請する考えも明らかにしています。

「じもとホールディングス」と「SBIホールディングス」の資本業務提携について、麻生副総理兼金融担当大臣は閣議のあとの記者会見で「金融機関が自分で判断するのが基本で、どうのこうの言うつもりはない」と述べる一方で、「地域の金融機関と企業は密接な関係があり、地域金融機関の存在は極めて大きいものだと思う。人口減少や高齢化など今の状況に合わせて経営を模索するのは経営者として当然だ」と述べました。

麻生副総理兼金融担当大臣の発言から、一つは思惑通りに進んでいると感じているのではないかということ、そしてもう一つ、SBIの北尾社長の構想は政府内にも浸透しているのだろうということが読める気がします。

地銀再編のキーマンはSBIの北尾社長だろうというのは、当初の予測通りで早速動き始めたということでしょう。

2.公的資金注入行の行方

https://www.dic.go.jp/katsudo/page_001201.html

上記URLをクリックすると、預金保険機構のホームページで「金融機能強化法に基づく資本参加実績一覧」を見ることができます。

この公的資本の注入行が注目される。つまり、再編が必要な可能性が高いということです。

SBIとの提携を発表したじもとHDも公的資金を受けています。じもとHD傘下のきらやか銀行、仙台銀行共にです。他に10行が公的資金を受け、返済が終わっていない銀行があります。

再編のネックになっていたのが、独占禁止法でした。しかし、地域における持続的なサービスの維持を目的に、高い市場シェアとなる地銀の経営統合や乗り合いバス事業者の共同経営を認める独禁法の特例法が10年間の時限措置として11月27日に施行されます。

この特例法の適用第一号事案と目されているのが、青森銀行とみちのく銀行です。ネックになるのは、みちのく銀行に限らず、豊和銀行、南日本銀行など多くの注入行が、現状の自己資本を踏まえると期限までの公的資金返済が難しいとみられています。

その解決手法とみられているのが、「新型コロナがあったからこその裏技」といわれているのが「改正金融機能強化法」を活用した借り換えです。

8月に施行された改正法によって公的資金の申請期限が4年延長(26年3月まで)され、返済期限15年が撤廃されました。経営陣の経営責任や収益目標の明確化もなくなり、申請条件は大きく緩和されています。

加えて、金融庁は19年6月に見直した早期警戒制度の下、持続可能な収益性や健全性についてモニタリングすることで、早い段階からの経営改善を促していると思われます。

大きく経営が傾く銀行が出ることを避け、再編によって金融安定化を図るというのが、金融庁が目指すところではないでしょうか。

いずれにしても、公的資金注入行の再編は金融庁も促進したいとなれば、進んでいくだろうと思われます。

各行とも再編シュミレーションは終わっており、今期の業績次第で動きは加速することになるのかもしれません。

3.再編の時間軸

再編の時間軸として考えておくべき3つのポイントがあります。

第一のポイントは、独占禁止法特例法による時限措置があります。今年5月27日に公布され、11月27日施行の予定です。この時限立法は10年間有効であるため、各都道府県で貸出等のシェアが高い銀行同士の経営統合を 考える上で極めて重視すべき措置です。

経営統合を行おうとする地銀は、金融庁に対して特例法に基づき独占禁止法適用除外の申請を行い、金融庁は特定の要件に該当するか確認し、その後、公正取引委員会と協議するという手順です。気になるのは下記の要件です。

① 地銀が将来にわたって当該地域における当該事業の提供を持続的に行うことが困難となるおそれのある地域であること。

② 地銀が継続的に、当該事業からの収益で、当該事業のネットワークを持続するための経費等をまかなえないこと。

この要件からすると、経営に行き詰った銀行において独禁法の特例を利用できると読み取れます。ということは、特例が利用されることは、すなわち時間的猶予が残されていない銀行ということになります。しかし、金融庁だけの判断ではなく、公正取引委員会とも相談である以上が時間がかかります。その時間を考えると、行き詰った銀行同士の再編には紆余曲折も予想されるため、時間的猶予はさほどないかもしれません。

第二のポイントは、公的資金投入の根拠法である金融機能強化法(金融機能の強化のための特別措置に関する法律)です。過去に3回延長され、現在は26年までとなっています。

また、今回の期限延長に伴い、収益目標や経営責任の明確化などの要件も緩和されており、再編をきっかけとしながら公的資金申請が行いやすくなっています。

第三のポイントに、過去に投入された公的資金の一斉取得日の到来があります。

預金保険機構のホームページで見ることができる「金融機能強化法に基づく資本参加実績一覧」は公的資金残高の一覧ですが、(https://www.dic.go.jp/katsudo/page_001201.html)この一斉取得期日において、議決権のない転換型優先株が普通株式に転換されるため、国が間接的な株主となります。

このため、この期日が実質的な返済期限となります。被注入行によっては、再編も対応手段の一つとなる可能性もあります。

これらのことから、難しい選択ながら、再編しようと考える地銀の動きはここ数年の時間に絞られてくると思われます。

地銀再編が動けば、地域の経済にも動きが出てくると思われます。

本日はここまで。ありがとうございました。未来創造パートナー

宮野宏樹

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