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米FRB利上げは日本にも大きな影響を与える。

1.FT報道・アトランタ連銀総裁「必要なら0.5%利上げ」

米アトランタ連銀のボスティック総裁はFRBが3月にも始める政策金利の引き上げについて、英フィナンシャルタイムズ(FT)に必要ならば利上げ幅を0.5%とする可能性を示唆しました。

インタビューの中で、2022年に0.25%の利上げを3回実施すべきだとの考えを示し、一方で、「50ベーシスポイント(0.55)の変動が必要、あるいは適切な状況だとデータが示すならば、私はそれを受け入れるつもりだ」とも話をしています。

消費者物価指数の動向や賃金の上昇がさらなるインフレに結びついていないかを注視するといいます。

米商務省が1月28日に発表した2021年12月の個人消費支出(PCE)物価指数は総合指数が前年同月比5.8%上昇し、1982年7月(5.8%)以来、約39年半ぶりの高い伸びとなりました。

PCEは米商務省が公表する、米国の家計が消費した財やサービスを集計した経済指標です。GDPの約7割を占める米国の個人消費支出はGDPの先行指標として注目されます。

(出典:MQL5:https://www.mql5.com/ja/economic-calendar/united-states/pce-price-index-yy)

米国では旺盛な需要に供給が追いつかず、高インフレが進んでいます。人手や部材の不足でサプライチェーン(供給網)の混乱が続いているほか、賃金の上昇が進み物価に強い上昇圧力がかかっています。

FRBはPCE物価指数を重視します。このまま高い水準が続けば、利上げの幅が0.25%ではなく、0.55%ということも十分に考えられるというのが、アトランタ連銀のボスティック総裁の考えです。

2.日本の銀行への影響はどうか

日銀は2021年に金融システムレポートで米長期金利の上昇における国内の銀行経営に与える影響を分析しています。邦銀の海外向け投融資が拡大するなか、米長期金利が1%急上昇すると大手銀行の自己資本比率は2023年度までに2.9ポイント下がると試算しています。米国の金利上昇は邦銀にとってリスクの一つになります。

FRBはインフレの加速からテーパリングを開始しました。金融政策の正常化に伴う米長期金利の上昇で財政基盤の脆弱な新興国から資金が流出する懸念があり、先進国の欧米だけでなく新興国のアジア向け投融資が多い邦銀に影響が及ぶ可能性があります。

今後、景気回復が鈍化すれば貸し倒れに伴う与信費用が増大する可能性があります。貸出残高に占める信用コストの割合が23年度までに国際的に展開する大手銀行(国際統一基準行)と地方銀行など(国内基準)でそれぞれ計1%ほど上昇すると試算しています。海外での貸出比率が高い大手行ほど影響が大きくなる公算です。

3.金利が上昇すれば価格が下落するのが債券

米国の長期金利が上昇するということは、国債価格が下落するということを意味します。そして、米国債をもっと多く保有している国はどこか?それは日本です。

2021年12月16日のロイターは、(https://jp.reuters.com/article/usa-treasury-securities-idJPKBN2IV005)10月の対米証券投資統計で海外投資家の米国債保有が過去最高の7兆6,480億ドルになったと報じました。

国別では日本が過去最高の1兆3,200億ドルとなり、世界一位。日本は世界で最も米国債を保有する国です。

債券と金利の関係を見ておきましょう。国債などの債権は価格が上がれば、金利は低下します。債券の価格が下がれば金利は上昇します。債券には利息が半年毎に支払われる利付債と言われるものとは別に、利息が割引率で示される割引債というものがあります。

例えば、90円で発行されたものが、1年後に100円の償還価格で償還されれば価格差の10円が利息相当となります。この利回りは正確には10%ではありませんが、10%相当と考えられます。

この割引債の発行価格が何かの弾みで90円ではなく100円に値上がりしてしまうとどうでしょうか。発行時と償還時の価格差が0%となります。つまり、発行価格が90円から100円に値上がりしてしまうと、金利は10%相当が0%に低下します。このように債券の価格が上昇すると、金利が低下するのです。

ということは、米国債も同じで、金利が上昇するということは価格が下落するということになります。米国は早ければ3月から政策金利を上昇させます。当然、米国債の金利も上昇してきます。すると、日本が保有している米国債の価格も下落するということです。

2018年に米国金利が上昇した際には、多くの地銀が損失リスクを抱え、金融庁が検査に入るという事態にもなっています。果たして、今回はどうでしょうか。

米金利の上昇は決して米国の話ではなく、日本にも大きな影響をもたらします。

本日はここまで。

ありがとうございました。

宮野宏樹

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