インドの新型コロナウイルス感染拡大が危機的状況
インドの感染拡大が危機的な状況です。
(出典:WHOホームページ)
上記は一日の感染者数の推移ですが、急激に増えています。インドは世界の状況とは違い、第2波と見えます。しかし、その波の急激な上昇は前回とはけた違いです。一日の新規感染者数は23日のWHOの資料を見ると、24時間で33万2730人に達しています。これは世界最多です。
【なぜ、感染者が急増したのか】
インドでは、第2波が収まり始め、新型コロナウイルスは封じ込めたかに見えました。今回の感染拡大は政府と国民の感染対策の緩みとウイルスそのものが変異しているという二つの側面があると思われます。
インドではマスク着用の徹底は緩んでいたのは事実です。英紙フィナンシャルタイムズに報道されていますが、インドのモディ政権は野党から「自己満足と国内の政治的懸念を優先している」と非難されています。
西ベンガルで巨大な選挙集会を開催し、4月13日には北部ウッタルプラデシュ州アラハバードでヒンズー教の祭典のクンブ・メーラを許可しました。結果、数百万人の巡礼者が参加し、ガンジス川で沐浴をしました。
また、一部の科学者の間では、インドは集団免疫を獲得したと信じられていたようでもあります。
こうしてみると、感染対策の緩みと言われても仕方がありませんが、人々は、注意をし続けなければ、「つい」緩んでしまうものなのでしょう。死者数も急増していることを思うと、感染対策の緩みが命の危険につながっていることを教訓とすべきでしょう。
そして、もう一つの側面のウイルスの変異ですが、インドのWEBメディア「Scall.in」によると、二重変異ではなく、三重変異が報道されています。
これまでは2つの変異からなると考えられていました。それは「ダブル・ミュータント(二重変異)と呼ばれていました。しかし、今回はさらに多くの変異が起きていると考えられています。
ウイルスは常に変異しています。その結果、何百万、何千万もの新しい変異種が生まれました。科学者が特に心配しているのは3つの変異がはっきりしてきたことです。(E484Q, L452R and P6814)そのため、「トリプル・ミュータント(三重変異)」と呼ばれるようになっています。
これらの変異によって、人間の免疫を回避する可能性、つまり抗体ができても、変異種には意味がない可能性も指摘されています。
【データの欠如】
インドが世界から批判を浴びているのは、データの少なさです。現在、慌てて変異種の遺伝子配列を研究し始めていますが、遅れは明らかです。そのため、免疫の回避やワクチンへの反応など、この分野での切実な問題に答えるための研究はなかなか進んでいません。
今のところ、誰が、どこで、感染したか、ワクチンが効果がなかった可能性はあるかについては何も公表はされていません。
【深刻な酸素不足】
死者数の急激な増加により、火葬場と埋葬地が不足しています。
酸素不足からパニックも起こっています。デリーの州知事のアルビンド・ケジワル氏はモディ首相と共に、都市部への酸素供給を確保するために、テレビで嘆願しています。
デリーの人々を代表してお願いしたい。即時の迅速な行動がとられない場合、デリーでは大きな悲劇が起きてしまう、と。
ある施設では前の晩に酸素が届かなかったために、1時間未満しか酸素が残っていない、とツイートしています。
酸素不足で60人の重篤患者の命が危険にさらされていると訴えている施設もあります。どの病院も集中治療室は満室で病院の外に行列ができている、あるいは救急車を待っているか、家で亡くなっているとも報道されています。
もはや、州と州の間では「ほぼ酸素ボンベを巡る戦争と同じ」な状況です。インド政府は今週、緊急時の酸素を増やすため、工業用酸素の生産を禁止しました。
酸素不足だけでなく、患者の命を救うためのあらゆる必需品が不足しています。そのため、闇市場でのやり取りも起きているようです。
【感染対策を保ち、経済を廻すしかない】
インドの状況を世界は凝視しなければなりません。もちろん、できることがあれば手を貸したいわけですが、こうなってしまってはできることは少ない。少なとくても、科学的解明を進めなければならないことは明らかです。
そして、私たちは感染対策を緩めてしまってはならないという教訓にもしなければならないのではないでしょうか。もちろん、自らの命を守るため、家族の命を守るためでもありますが、感染が広がることで、医療もひっ迫し、助かる命が助からなくなる可能性があるとすると、感染対策の緩みはインドの状況を生み出しかねないということではないでしょうか。
インドはもはや、国の制度は機能していません。私たち一人一人の感染対策が重要なのだと改めて感じさせられます。