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英国の予想を超えるインフレは2022年の象徴か

1.12月の英消費者物価5.4%上昇、30年ぶりの高水準

(出典:TRADING ECONOMICS)

英統計局が1月19日に発表した2021年の英国の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で5.4%上昇しました。先月より0.3ポイント高まり、インフレが進行しています。天然ガスなどエネルギー価格の上昇に加え、食料や飲料、レストラン料金、家具など幅広く値上がりしました。さらに、人手や部材などの供給不足も起きています。

市場予想の5.2%を上回ってもおり、以下のグラフが示す通り2000年以降のピークだった2008年11月と9月(共に5.2%)を超え、1992年3月以来の水準となりました。

(出典:TRADING ECONOMICS)

金融市場では英イングランド銀行(中央銀行)が2月に追加利上げを迫られるとの予想が強まっています。しかし、金利を引き上げれば家計に過度な圧力がかかることで、経済の回復を遅らせることにもなりかねないため、ジレンマに陥っているのが英イングランド銀行です。

英イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、現在の高インフレと低失業率が重なっていることの潜在的な危険性を強調しています。労働市場がタイトであるため、賃金が上昇する可能性が高く、それは物価を押し上げる要因になっていきます。

ベイリー総裁は、当面エネルギー価格は高止まりする可能性が高いと指摘しています。ガソリンなどの燃料の上昇率は3割弱に高止まりし、輸送費用を押し上げています。4月にはインフレのさらなる加速が確実視されています。

英国ではエネルギー小売価格に上限規制があり、市場動向を踏まえて年2回改定されます。2021年10月には標準モデルで139ポンド(12%)高い年1277ポンドに引き上げられました。天然ガスの記録的高騰を受け、2022年4月はさらなる大幅増額が避けられません。そのため、4月には一般家庭向け電気・ガス料金が大幅に引き上げられる見通しです。そのため、春にはインフレ率はさらに上昇し、6%を超えるレベルに達することが予想されます。

12月のインフレ率は賃金の伸びよりも大幅に上昇しています。11月までの3カ月間の賃金上昇率は年率で3.8%でした。これは家計へのプレッシャーになっています。

2.インフレがもたらす姿

1月19日にインフレ率が5.4%と市場予想を超えた発表がされた日の英国の10年債利回りは上昇して1.3%となり、2019年序盤依頼の高水準となりました。英国の10年債利回りの過去1年と5年のチャートを以下見てみます。

(出典:TRADING ECONOMICS/英国債10年物利回り1年/日本時間:2012年1月21日9:36)

(出典:TRADING ECONOMICS/英国債10年物利回り5年/日本時間:2012年1月21日9:36)

1年のチャート、5年のチャートを見ても、上昇基調にあることが分かります。2022年は利上げが想定されますので、金利上昇はますます鮮明になるでしょう。そして、インフレ率が上昇する以上は、金利の上昇も止まらないため、当面、金利上昇を想定していかなければなりません。

以下は英国株式市場です。5年間のチャートを見ると、パンデミック発生後落ち込みますが、その後、大きく伸びていることが分かります。

 

(出典:TRADING ECONOMICS)

以下は英国の10年間のGDP伸び率です。パンデミック以降、株式市場は上昇が続いているのに対して、GDPは上昇と下降を繰り返しており、株式市場の動きとは一致していません。つまり、経済の動向に関係はなく株価が上昇しているということです。

(出典:TRADING ECONOMICS)

経済が上昇せずとも、株価が上がる要因が以下のチャートです。英国の中央銀行であるイングランド銀行のバランスシート。パンデミック以降、イングランド銀行も世界の中央銀行同様に市場から国債の購入を進めました。つまり、市場に資金を供給したのです。市場に出回った資金は、株式市場に向かい、バブルともいえる株価の上昇をもたらしています。

そして、供給された資金は貨幣の価値を下げるため、モノの価値が上昇し、インフレを起こしているのです。

上記チャートを見ると分かりますが、チャートの伸びは既に止まって、横ばいになっています。つまり、中央銀行は市場からの資産購入を止めています。理由はこれ以上の資金の供給はさらなるバブル、さらなるインフレにつながるからです。

インフレを止めるために、金利を上げます。金利を上げれば、株式市場から資金は逃避して、債券市場に流れます。インフレが続く限りは、株式市場は上昇する可能性が高いです。しかし、インフレが抑えられるほどの金利の上昇となれば、株式市場が下落に転じることになるでしょう。

この微妙なかじ取りを中央銀行は迫られており、それは英国だけではありません。世界各国の中央銀行に求められていることです。そのため、今回の英国での市場を上回るインフレ率の発表から起きていることは、2022年世界中で起きることの象徴なのかもしれません。

英国、EUはもう一つ大きな課題があります。ロシアとウクライナの問題。これは、英国やEUのエネルギー問題でもあり、インフレ問題でもあります。この点も2022年の象徴となりそうです。

今回はここまで。ありがとうございました。

宮野宏樹

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